さくらの旬の味覚発見!

山形の干し柿

上山の伝統を今に伝えます!
 初雪も降り、寒さが少しづつ増してきた山形。朝晩の気温は3度前後にも下がり、雪囲いなど冬支度に追われています。皆さん、風邪などひいてないですか??
 さてこの時期になると、家の外にのれんの様に下げられた干し柿をよく見かけますよね!なんだか昔懐かしいような気持ちになってくる光景…さくらの実家でも、よく母が洗濯物と一緒に柿を干していました。自家製の干し柿は、黒くて白い粉がまだらについた感じ。それを歯でちぎるようにして食べていたので、正直さくらの干し柿のイメージは「固い」しかなかったんですよね…。そんなさくらに正しい干し柿について色々と教えてくださったのが、上山市相生の「須田青果園」の須田善昭さん。甘くてやわらかい干し柿ができるまでに密着です!

*干し柿の加工方法とこだわり*
 お邪魔したこの日、須田青果園さんではちょうど収穫を終え、皮むき作業のピークを迎えていました。柿は収穫してから一週間以内に皮をむき、吊してしまうんだそうです。今年は10月末に「平核無柿」、11月初めからは上山地域の特産、「紅柿」を収穫しました。1.5ヘクタールある須田青果園さんの柿畑で栽培されているメインの品種はこの紅柿。紅柿は干し柿にするときれいなべっこう色になり、特に果肉がやわらかく、表面の白粉もよく出てとてもおいしくなるのだそうです。

 もぎたてで実が新鮮なうちに、急ピッチで作業はすすめられます。加工場にはプロ用の自動皮むき機が4台。回転の速さを調節できるので、初めはスロースピードで、徐々に回転数を上げていくのだそうです。早速さくらも皮むきにチャレンジ!柿のヘタの方を機械にさしこむのですが、ちょうど真ん中にささないとうまく回転できません。力を入れず、内側から外側へ…。あれっ!実までむけてしまって、食べるところがなくなってしまいました〜〜!!!さすが皆さんは慣れた手つきで、あっという間にツルンとむいてしまいます!慣れないと怪我をする事もあるそうですよ。

  皮をむいた柿は、すぐに紐でくくります。そしてまずは加工場の外にある「はせ」にのれん状態に吊し、2週間自然乾燥させます。上段と下段で微妙に風通しが違うので、良く風が通る上段には大粒の柿を、下段には少し小ぶりな柿を吊し、一粒一粒の状態を確認しながら時々位置を変えたりしているんだとか。柿は時々さわってあげないと白粉が出にくくなるため、須田さんはマメに柿をもんだり、タワシでこすったりしてあげるんだそうです。この白粉は糖分の結晶で、まさに甘みがたっぷり含まれているという証拠!まだらでなく、きれいに粉が出た方が見た目も味も良く、価値が上がるんだそうです。とにかく雨に濡れたりしないよう、天候チェックはかかせません。さわってみて、表面がモチモチし、中の種の感触がはっきりとしてきたら次のステップへ!

 「はせ」で2週間乾燥した柿を、次は室(むろ)の中で練炭を使い二昼夜乾燥させます。実はこの室は様々な工夫がこらしてある秘密の部屋。 工業高校出身の須田さん自ら考えた構造で、床、梁、天井全てが柿を乾燥させるためにベストなコンディションに設計されているのです!年輩の方でも作業が楽なように、踏み台のいらない高さに調節、柿が発散した水分が天井まで壁づたいに登り換気される仕組み、そして練炭を設置する位置など、とにかくこだわり盛り沢山の室、詳しい内容は内緒ですよ〜!(^o^)

 さて、室で乾燥した柿は次に加工場の2階へと移され、今度は室内で自然乾燥されます。ここでさらに1コ1コタワシをかけたり手もみしたり、逆さ吊りにしてまんべんなく乾燥を促し、手をかけてあげること10日間…。とにかくどれだけ水分をうまく抜けるかが勝負どころ、決して気をぬくことはできません。そして実はこの2階の乾燥室も、はせ同様換気しやすいように工夫がこらしてあります。さすが須田さん自慢の乾燥施設!脱帽です☆

 「とりあえず乾燥させれば、誰にでも干し柿は作れます。ただ固くて、白粉がまだらになったり、味にもバラつきがでたりすると思います」と須田さん。外側をサクサクに、そして中をジャムのようなトロトロの柔らかさに…須田さんの干し柿はとにかく柔らかく食べやすいのが特徴なんです!

 
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一瞬でむけちゃいます!!その早さは2秒弱!さくらもへっぴり腰でチャレンジ!


ヘタに丁寧に紐を結んで。【クリックで拡大写真】


見て下さい! 見事でしょう〜!?
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はせに吊された柿。すごい量です!
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*栽培方法とこだわり*
 須田さんの柿畑がある上山市相生は山間にあり、柿が栽培しやすい地域。もう少し上にいくと気温が下がるため、栽培しにくくなるそうです。ご近所のお宅でも
ほとんど皆さん干し柿を作っていて、この地域の消防団では練炭を使用している家々の乾燥場まわりを行っているほど。乾燥場の練炭の数や火の近さなどが、それぞれの家の干し柿の個性になるんだそうです。


 須田さんの干し柿づくりのこだわりは、原料になる柿を他の農家からは一切仕入れないという事。畑にも除草剤を使用せず、堆肥や有機質土壌改良剤などを投入し、徹底した土壌作りと管理で育った須田青果園産の柿のみを使用しています。以前は他の畑から仕入れた柿を使用していた事もありましたが、品質や味がバラバラだったり、実がヘタから落ちたり…。そんな経験をして、改めて「うちで作った柿じゃないとこの柔らかさと味が出ないんだ!」と実感されたそうです。

 柿の木の手入れは3月初めの剪定から始まります。柿の木は、花が付き、小さい実がなり始めた6月に1回と8月に1回、自分の体力以上に付いた実を自然に落果させます。これは「生理落果」といい、余分な実を付ける事を防ぐ現象なんだそうです。この落果が終わってから本格的な作業がスタートです。混み合った枝、徒長枝、細い枝、実を付けていない枝を選んで切り取り、必要な消毒をします。陽当たりを良くし、摘果して数を制限し品質を均等に揃える事が重要だそうです。

 栽培で大変な事は、昔からある高い木の収穫。8メートルのハシゴのてっぺんまで登る事もあり、これがなかなか大変!そして柿の木は表どし、裏どしという「隔年結果」の性質を持っていて、豊作の次の年は収穫が激減…。このバラつきも少々悩みの種なんだそうです。そして干し柿作りには「はせ」や乾燥場などの設備が必要となるため、新規で取り組むにはちょっと難しいそうです…。須田さんの農園の柿作りも、曾おじいさんから代々受け継がれてきたもの。これからもずっと守り続けてほしいですね!!
 
  須田さんの干し柿は贈答品として人気が高いため、全て年内出荷。収穫量が多い年は、毎日深夜までの作業が続きます。市場と農協がメインの出荷先ですが、近頃はインターネット通販でのリピーターが多いそうです。自家製の固〜い干し柿しか食べた事がないさくら…。今年の冬は是非とろ〜り柔らかい本物の干し柿を食べてみたいです!!
 柿は果物の中でもビタミンCがとても豊富!!レモンやイチゴに決して負けてはいません。それ以上に、ビタミンK、B1、B2、カロチン、タンニン、ミネラルなどを多く含んでいるので、「柿が赤くなれば、医者が青くなる」という言葉があるほど、柿の栄養価は高いんですよ!
 ビタミンたっぷりの柿で風邪知らず!皆さんも山形のふるさとの味「干し柿」を是非味わってみて下さいね!


須田青果園の須田善昭さんと自慢の柿たち。「絶対ウマイです!!」
■須田青果園さんのホームページはこちらです。

 

2階の室内乾燥室も、この通り!


だんだん干し柿らしくなってきました!


ピーク時は、作業は深夜にも及びます。


収穫を終えた柿木。来年もよろしくね!それにしても哀愁がただよっていますね〜。
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掲載日 H15.11.21
更新日 H20.11.12

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